小さな,小さな,穴。蜂が一匹通ることができるだけの穴でも,世界を覆う大帝国を崩壊させることがある。IBM,NEC,ジャストシステム,任天堂…。日本という小さな国にいても,そうして影を薄くしていった例を,私たちはいくつも見せつけられてきた。
かつてIBM社がそうであったように,今はマイクロソフト社が一大帝国を築いている。だが,その帝国を揺るがすかのようなニュースがいくつか出てきている。司法省による叩き潰し,リナックスなどオープンソースOSの台頭,ウインドウズCEの進まぬ普及,トップ・ポータルサイトの座をいつまでも奪えない…。しかし,そのどれを見ても,MS帝国を明日にも覆すような問題はなく,まだまだ帝国の隆盛は続くと思われる。
確かに,MS関連のニュースは最近とみに目に付く。それは,それだけの支配力があるということにほかならない。MSがゲーム機を開発していると云うニュースは,ヨーロッパで非公開でそのゲーム機が開発者に展示されたということで,現実に動いていることが明らかになった(Next-Generationの記事)。すべての分野でMSの動きは市場のカギを握っている。頻発するセキュリティー問題もそれだけ利用者が多いという証し。そして選択肢がはっきり云って多くない現状では,問題があってもそれを利用者が手放す可能性は,とても少ない。それほど,大きな問題とは,とらえられていないのだ。
記事にあるように,司法省がどのような動きを起こしても,MSの息の根を止めるどころか将来への大きな可能性を残すことになる。AT&Tの例は適切だ。リナックスOSは,決してウインドウズに置き変わるものではない。また皆がすでにウインドウズに慣れてしまっている,という事実が事態を動かさない。ビル・ゲイツは,間違いなく有史上最高のマーケティング・ディレクターであり,その下にあるMSは,揺るぎないバックボーンを持っている。だが,この世界はなにが起こるかわからない。誰も気づかぬところから帝国が崩壊することはあり得る。今回のレポートで取り上げている6つの問題以外のほんの小さな穴からでも…。その穴がなんなのか,まだ,誰も知らない。
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